夕方、ベルトがきつくなる理由——人の細胞はガスを作れない
夕方の新幹線で、隣の席の男性がベルトをひとつ、そっとゆるめました。
朝はちゃんと締まっていたはずのベルトが、夕方にはきつい。
体重は変わっていないのに、夕方になるとお腹だけが前に出る——あの中身は、
ほとんどガスです。今日は、そのガスがどこから来ているのかという、
あまり知られていない話をします。「張る=野菜を減らす」と考える前に、
先に見てほしいものがあるからです。

人の細胞は、ガスを作れません
ここからが本題です。お腹の中でふくらんでいる気体のうち、
発酵で出てくるぶん——二酸化炭素、水素、メタン。これを作る仕組みを、
人の体はそもそも持っていません。
作っているのは、大腸に住んでいる菌です。
つまりお腹の張りは、自分の中で発酵が起きている「音」のようなものです。
パン生地がふくらむのと同じことが、おなかの中で起きています。
腸の中で発酵が起きている音。
発酵ガスの正体——水素・メタン・二酸化炭素は「菌の仕事」
大腸の菌は、小腸で吸収しきれなかった食物繊維などを餌にして発酵し、その過程でガスを出します。研究の世界では、呼気に出てくる水素やメタンが「腸内でどれくらい発酵が起きているか」を外から見るための手がかりとして使われているほどで、これらのガスが菌の活動の産物であることは、よく確かめられた事実です。

いちばん多いのは、飲み込んだ空気
ちなみに、腸内ガスでいちばん量が多い成分は窒素です。
窒素のほうは、菌の仕事とは別です。口から飲み込んだ空気が、
そのまま下まで来ているだけです。
早食いをすると、食べ物と一緒にかなりの空気を飲み込みます。
ストローも、炭酸も、食べながらのおしゃべりも、全部そこに乗ってきます。
「野菜を減らす」が、もったいない理由
お腹が張ると、たいていの人は「野菜が多すぎたかな」「繊維が合わないのかな」と考えて、
まず野菜を減らします。
たしかに、繊維を増やせば発酵で出るガスは増えます。そこは研究でも、
きれいに確かめられています。
でも、減らして静かになったのは張りだけでなく、菌に渡していた餌のほうも一緒に止まっています。
腸の菌に繊維という餌を渡すことは、腸を育てる投資でもあるからです。
順番が、もったいないのです。先に見たほうがいいのは、毎日飲み込んでいる空気のほうです。
今日からできることは、ひとつだけ
- 夜ごはんを、いつもよりゆっくり食べる:時計で測る必要はありません。最後のひと口までに5分くらい差が出れば十分です
- ストロー・炭酸・食べながらの早口は、空気を飲み込む量を増やします。張りが気になる時期だけ、少し意識してみてください
- 野菜を減らすのは、これを1週間やってみてからでも遅くありません
張ること自体が悪いわけではありません。発酵が起きている腸は、ちゃんと仕事をしています。ただし、体重が急に落ちてきた・便に血が混じる・夜中に目が覚めるほど痛む——このあたりは発酵の話とは別のことなので、そのときは早めに医療機関で診てもらってください。
お腹の張りとガス——要点まとめ
- 夕方のお腹の張りの中身は、ほとんどガス
- 発酵で出るガス(二酸化炭素・水素・メタン)を作っているのは腸内細菌。人の細胞に作る仕組みはない
- いちばん量が多い窒素は、口から飲み込んだ空気
- 野菜(繊維)を減らすと、張りと一緒に菌への餌も止まる
- まずは夜ごはんをゆっくり食べて1週間。減らす判断はそれから