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腸

夕方、ベルトがきつくなる理由——人の細胞はガスを作れない

Dr.HIRO(整形外科医) ・2026.08.20

夕方の新幹線で、隣の席の男性がベルトをひとつ、そっとゆるめました。
朝はちゃんと締まっていたはずのベルトが、夕方にはきつい。
体重は変わっていないのに、夕方になるとお腹だけが前に出る——あの中身は、
ほとんどガスです。今日は、そのガスがどこから来ているのかという、
あまり知られていない話をします。「張る=野菜を減らす」と考える前に、
先に見てほしいものがあるからです。

ふくらむパン生地と発酵の泡が立ちのぼる瓶——腸内発酵の比喩
パン生地がふくらむのと同じことが、おなかの中で起きている

人の細胞は、ガスを作れません

ここからが本題です。お腹の中でふくらんでいる気体のうち、
発酵で出てくるぶん——二酸化炭素、水素、メタン。これを作る仕組みを、
人の体はそもそも持っていません。

作っているのは、大腸に住んでいる菌です。

つまりお腹の張りは、自分の中で発酵が起きている「音」のようなものです。
パン生地がふくらむのと同じことが、おなかの中で起きています。

お腹の張りは、
腸の中で発酵が起きている音。

発酵ガスの正体——水素・メタン・二酸化炭素は「菌の仕事」

大腸の菌は、小腸で吸収しきれなかった食物繊維などを餌にして発酵し、その過程でガスを出します。研究の世界では、呼気に出てくる水素やメタンが「腸内でどれくらい発酵が起きているか」を外から見るための手がかりとして使われているほどで、これらのガスが菌の活動の産物であることは、よく確かめられた事実です。

エビデンス 健常成人の腸内ガスの組成を調べた11研究のメタ解析で、発酵に由来する成分は二酸化炭素・水素・メタンであることが整理されています(Modesto et al., Dig Dis Sci, 2022)。また水素・メタン・硫化水素は腸内細菌の発酵活動を映す非侵襲マーカーとして研究に用いられています(Larik et al., Gut Microbes, 2026)。※組成の割合は研究間のばらつきが大きいため、本記事では数字を出していません。
大腸の中で菌が食物繊維を食べてガスの泡を出している概念図
発酵ガスを作っているのは、大腸に住んでいる菌。人の細胞にこの仕組みはない

いちばん多いのは、飲み込んだ空気

ちなみに、腸内ガスでいちばん量が多い成分は窒素です。

窒素のほうは、菌の仕事とは別です。口から飲み込んだ空気が、
そのまま下まで来ているだけです。

早食いをすると、食べ物と一緒にかなりの空気を飲み込みます。
ストローも、炭酸も、食べながらのおしゃべりも、全部そこに乗ってきます。

「野菜を減らす」が、もったいない理由

お腹が張ると、たいていの人は「野菜が多すぎたかな」「繊維が合わないのかな」と考えて、
まず野菜を減らします。

たしかに、繊維を増やせば発酵で出るガスは増えます。そこは研究でも、
きれいに確かめられています。

でも、減らして静かになったのは張りだけでなく、菌に渡していた餌のほうも一緒に止まっています。
腸の菌に繊維という餌を渡すことは、腸を育てる投資でもあるからです。

順番が、もったいないのです。先に見たほうがいいのは、毎日飲み込んでいる空気のほうです。

今日からできることは、ひとつだけ

DR.HIRO からひとこと

張ること自体が悪いわけではありません。発酵が起きている腸は、ちゃんと仕事をしています。ただし、体重が急に落ちてきた・便に血が混じる・夜中に目が覚めるほど痛む——このあたりは発酵の話とは別のことなので、そのときは早めに医療機関で診てもらってください。

お腹の張りとガス——要点まとめ

「結局なにから始めればいいの?」の答えを、ぜんぶ包んでおきました。
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この記事を書いた人
Dr.HIRO / 整形外科専門医

運動器を診てきた整形外科医として、生活の側から体を設計する方法を書いています。講座・教材はこちら。

この記事は一般的な健康情報です。診断・治療を目的としたものではありません。持病のある方、通院中の方は主治医にご相談ください。