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体の中の年齢

薬の前に、まずやること——生活習慣が「第一選択」である理由を、数字で

Dr.HIRO(整形外科医) ・2026.09.09

医者をやっていて、ずっと思っていることがあります。薬に頼る前に、
まずは生活習慣の改善ですよ
、ということ。これは僕の意見ではなく、
実はどの治療ガイドラインにも書いてあることです。ただ、
外来でそれを語る医師は少ない。というか、時間がない(笑)。
この記事では、その「語られない第一選択」を、数字つきで書きます。

薬の錠剤の隣に置かれた、味噌汁とサラダの朝食
薬の前に、まず食卓。ガイドラインが最初に指しているのは、こちらです。

「第一選択」は、薬ではありません

高血圧、糖尿病、脂質異常症。日本の学会が出している治療ガイドラインを開くと、
どれも最初のほうで同じことを言っています。まず生活習慣の修正を。
薬はその上で
、と。

つまり「薬か、生活習慣か」ではなく、順番として生活習慣が先、
というのが医学の標準です。これは僕が機能性医学を学んだから言っているのではなく、
保険診療のど真ん中に書いてあることです。

なぜ外来で語られないのか

僕の本音
語る先生が少ないというより、時間がないんです。

3分の外来で、食事と睡眠と運動の話をして、検査結果を説明して、
薬も出して、次の患者さんを呼ぶ。物理的に無理なんです。
だから外来では、いちばん短時間で出せるもの、つまり薬だけが残る。

これは誰かのせいではありません。仕組みの話です。ただ、
その仕組みの中にいると、「生活習慣を整える」がどれくらい効くのかを、
患者さんに数字で伝える機会がなくなります。だから僕は、
外来で言えない分を、ここで書くことにしました。

薬31%、生活習慣58%——有名な研究の数字

いちばん有名な研究を1つだけ紹介します。アメリカの糖尿病予防プログラム(DPP)という研究です[1]。
糖尿病になりかけ(耐糖能異常)の3,234人を3つのグループに分けて、
平均2.8年、追いかけました。

A

何もしない

偽薬を飲む(比較のための基準)

B

薬

メトホルミン(糖尿病の標準薬)を飲む

C

生活習慣

食事と運動を整える(体重7%減・週150分の運動が目標)

結果は、何もしないグループと比べて、糖尿病になる人が——

31%

薬で減った

メトホルミン

58%

生活習慣で減った

食事と運動

薬の、ほぼ2倍です。しかも生活習慣のグループは、60歳以上ではさらに効果が大きく、
71%減っていました[1]。

ここで大事なこと
この研究は「薬が効かない」と言っているのではありません。薬も31%減らしています。言っているのは、生活習慣を整えることは、薬と同じかそれ以上の「治療」として数字が出ている、ということです。

10年たっても、差は残った

「一時的に頑張っただけでは?」と思う方もいるでしょう。
同じ人たちを10年後まで追いかけた続報があります[2]。
研究が終わったあとは全員に生活習慣の指導が提供されたので差は縮まりましたが、
それでも10年間の累積で見ると、生活習慣のグループは34%、
薬のグループは18%
、糖尿病の発症が減ったままでした。

最初の3年で身につけた「食べ方と動き方」は、10年後の体にまだ残っていた、
ということです。

ただし、万人に同じ答えはない

ここまで読んで、「じゃあ今日から糖質を減らして運動しよう」と思った方に、
ひとつ注意があります。「生活習慣を整える」には、万人に同じ答えがありません。

糖質を減らしたほうがいい人もいれば、減らすと動けなくなる人もいる。
朝の運動が合う人もいれば、夜のほうが続く人もいる。体は指紋と同じで、
一人ひとり違います。だから僕自身も、食事を設計して、記録して、
自分に合うものだけを残す、という実験を自分の体でやってきました。

大事なのは「何が正しいか」ではなく、「自分に何が合うか」を確かめることです。
DPPの生活習慣グループも、全員に同じ献立を配ったのではなく、
一人ずつ担当がついて、その人の生活に合わせて調整していました[1]。

治療中の方へ
薬を飲んでいる方は、自己判断でやめないでください。この記事は「薬をやめよう」ではなく「薬の前に、まず生活習慣が第一選択として存在している」という話です。変える前に、主治医に相談してください。

まとめ:薬の前に、自分の体を知る

薬の前に、自分の体を知ること。それが、いちばん効く「第一選択」だと、僕は思っています。

出典

  1. Knowler WC, Barrett-Connor E, Fowler SE, et al.; Diabetes Prevention Program Research Group. Reduction in the incidence of type 2 diabetes with lifestyle intervention or metformin. N Engl J Med. 2002;346(6):393-403. PMID: 11832527/DOI: 10.1056/NEJMoa012512(対象3,234人・平均追跡2.8年・発症率の低下:生活習慣58%・メトホルミン31%・60歳以上の生活習慣群71%)
  2. Diabetes Prevention Program Research Group; Knowler WC, Fowler SE, et al. 10-year follow-up of diabetes incidence and weight loss in the Diabetes Prevention Program Outcomes Study. Lancet. 2009;374(9702):1677-1686. PMID: 19878986/DOI: 10.1016/S0140-6736(09)61457-4(10年累積の発症率の低下:生活習慣34%・メトホルミン18%)
  3. 日本高血圧学会『高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)』——生活習慣の修正(減塩・野菜果物・減量・運動・節酒・禁煙)は、すべての高血圧患者に推奨される基本の治療
  4. 日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024』——2型糖尿病の治療は食事療法・運動療法を基本とし、薬物療法はその上で検討する
  5. 日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』——生活習慣の改善(食事・運動・禁煙・体重管理)が薬物療法に先立つ基本
「結局なにから始めればいいの?」の答えを、ぜんぶ包んでおきました。
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この記事を書いた人
Dr.HIRO / 整形外科専門医

運動器を診てきた整形外科医として、生活の側から体を設計する方法を書いています。講座・教材はこちら。

この記事は一般的な健康情報です。診断・治療を目的としたものではありません。持病のある方、通院中の方は主治医にご相談ください。